理事長あいさつ

「世界平和のためにできることは、家に帰って、あなたの家族を愛しなさい」

マザー・テレサ

これはマザーテレサがノーベル平和賞を受賞した時に、「世界平和のために、私たちに何かできることはありますか?」と聞いた取材陣に伝えたあまりにも有名な言葉です。

私は、この言葉は世界絆ネットワークが進む未来の礎であると考えています。

この世界絆ネットワークが生まれたきっかけは2011年3月11日に起きた東日本大震災でした。

津波が押し寄せ、家や、大切な人々、歴史、大切なもの、全てを無慈悲に押し流していく様子は、今でも私の心に強烈に焼き付いています。

私は、この災害で奪われたものを総称すると、人々の「ふるさと」であると考えています。

「ふるさと」とは、自分の生まれ育った場所を想像するかもしれません。しかし、私はこの言葉に生まれ育った土地という意味以外に、もっと大きく、そして優しい意味も含まれていると感じています。

「ふるさと」とは、「居場所」のこと

「ふるさと」という言葉には、欠かすことができない自分のルーツや、目を閉じたらいつでも逢える、自分を笑顔で迎え入れてくれる人たちとの「居場所」のことなのではないかと思うのです。

人間が一人で生きていくことは、生物的には可能でしょう。

ですが、自分の才能を見つけたり、他者に存在を認めてもらったりすることで、自分は価値のある人間だと自身が思えることが人間にとっては必要で、生きがいになることではないでしょうか。

つまり、生きがいとは誰かとの繋がりや絆から生まれてくるのです。

絆とは、人と人との心、その土地や自然、モノ、私たちが生きていく時に当たり前にそばにいてくれるものたち全てを示しています。

愛する「ふるさと」を守りたい

世界絆ネットワークでは、異なる土地や環境で育った人々、それぞれのふるさとに敬意を持ち、1人1人との繋がりを大切にすることで、次世代、そして世界との絆を深めていくことを目指しています。

私自身、自分のふるさとを愛しています。

桜が咲き乱れていた土手で友達と駆け回った少年時代のことや、仲間とともに将来について語り合った頃のこと、叱られた時や悔しい時にこっそり涙を流した秘密の場所、そんな私にとってかけがえのない思い出が時の移り変わりと共に姿を変えて行く。

永遠に変わらないままでいてくれるわけではありませんが、皆様の大切なふるさとを守っていくために環境の保全や文化の継承をしていくことが、私たちにできることではないかと考えています。

世界との絆を育んで生きたい

災害は、人々にとって大切なふるさとをたくさん奪っていきました。

ですが、ずっとこの国に息づいてきた精神や考え方は、私たちの心の中で“ふるさとのあり方”となって支えてくれています。

その一方で、世界ではふるさとを奪われたり、失ったりしている人々が大勢います。

しかも、その方々の文化や言葉、土地や自然はまるで最初からなかったかのように静かに姿を消していこうとしています。

私は、その方々が大切にしたいふるさとを実際に見て、聞いて、知ることで、本当に必要なお手伝いをしながら世界との絆を育んで生きたい。

それが、ふるさとを愛している仲間の一人として、お役に立てることだと感じています。


NPO法人世界絆ネットワーク
代表理事 岡 英司